金魚
居心地の悪い水の中では、金魚はすぐに死んでしまう。
きれいな水を与えても、すぐには元気を取り戻せない。
祭りで買った1匹を、金魚鉢にいれて飼い始めたものの、うまくはいかなかった。
ため息をつき、互いをけん制し、どこまでも求め合い、期待し合う。
こんな生き方、どれだけの間続いてゆくのだろう。
生きることは確かに厳しい。
ただ、生きることはきっともっと楽しい。
喜び多きものだと、信じたい。
あの金魚が、自分たちのように思えてならない。
きれいな水に、飛び込みたい。
そんな水。
いや金魚たちと、僕らは違う。
小さな鉢の外に出て、旅ができる。
鉢の外に出ずとも、旅に思いをはせることができる。
そこにはきっと、心地よい水があるはずだ。
そう信じることで、生き続ける。
誰に宛てるでもなく、連ねる思い。
書き捨てているわけではない。
きっと、もう一人の自分に向けて書いているのだ。
共感など求めているわけではない。
ただ、心の内にある澱を、はき出してしまいたくて。
金魚鉢の中にはき出せば、水はにごる。
大きな天空に向かって噴き出す、水の切なさよ。